2026年11月5日、フジテレビが実写ドラマの制作に生成AIを本格導入していることを発表しました。すでに放送中の『救命病棟24時』など複数のドラマで使用されており、2027年10月をめどに、フジテレビが制作するすべてのドラマでAIを活用できる体制を整える計画です。
実際に『救命病棟24時』第1話では、爆発事故のシーンに登場する架空の空撮風景をAIで生成し、そこへ煙を合成する手法が使われました。さらに、一部の映像制作工程では、従来の方法と比較して作業工数を最大70〜80%削減できたといいます。
こうしたニュースを聞くと、「俳優の顔や演技もAIになるのか?」「人物の動きや声、背景のどこをAIで作るのか?」「制作費を安くするための導入なのか?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
ただし、現時点で俳優の顔や声をAIに置き換えるという発表はありません。また、作業工数を最大70〜80%削減したという数字は、ドラマ全体の制作費が同じ割合で減ったことを意味するものではありません。
この記事では、フジテレビがドラマのどの部分をAIで制作しているのか、実際にAIが使われた場面、制作費削減の狙い、俳優やスタッフへの影響、2027年以降の計画について、公式発表をもとに整理します。
フジテレビがドラマに生成AIを導入|使う部分と制作費・俳優への影響
フジテレビは2026年11月5日、ドラマ制作に生成AIを活用するための実験場「AI Sandbox(AIサンドボックス)」を設置し、本格的に運用していると発表しました。
AI Sandboxは、フジテレビの湾岸スタジオに設けられた制作プロジェクトです。2026年7月に新設されたAIセンターのもと、ドラマ・映画制作部門、技術部門、外部のAI関連企業などが連携しています。
すでに2026年10月期の『救命病棟24時』をはじめ、複数のドラマで生成AIの活用が始まっています。
今回の発表で確認できた主な使用範囲は、次のとおりです。
| AIを使用する部分 | 2026年11月5日時点の状況 |
|---|---|
| 背景・風景 | AIによる生成を確認 |
| 爆発・事故現場 | AIを活用した映像制作を確認 |
| 医療シーン | 細かな映像処理にAIを活用 |
| 撮影前の完成イメージ | 画像・映像の生成にAIを活用 |
| 俳優の顔・外見 | AIによる代替は未発表 |
| 俳優の演技・身体の動き | AIによる代替は未発表 |
| 俳優の声・セリフ | AIによる代替は未発表 |
| 脚本・ストーリー | AIによる執筆は確認できない |
現時点で具体的な使用例が公表されているのは、背景や事故現場の映像、医療シーンの映像処理、撮影前のイメージ制作などです。
つまり、ドラマの出演者や脚本をAIに置き換えるというより、実写撮影だけでは難しい映像表現や制作工程をAIで補う取り組みが先行しています。
ただし、今後の使用範囲をすべて明らかにした発表ではないため、将来的に人物や音声などの生成AI活用が行われるかどうかについては、現時点で判断できません。
公式発表:フジテレビ「AI Sandbox」を設置(2026年11月5日)
フジテレビはドラマのどの部分をAIで制作するのか?
今回のAI導入について、最も気になるのは、ドラマの映像や音声のどこまでをAIが担当するのかという点でしょう。
生成AIには、画像や動画、音声、文章などを作成する技術があります。しかし、AIをドラマ制作に導入するからといって、これらすべての技術を使用するとは限りません。
フジテレビが公表した使用例と、現時点では確認できない部分を分けて見ていきます。
俳優の顔や演技・身体の動きもAIになるのか?
2026年11月5日の公式発表では、実在する俳優の顔や身体の動きをAIで再現し、本人の出演シーンに置き換えるという計画は発表されていません。
例えば、俳優が撮影していない場面に本人そっくりのAI生成映像を登場させたり、俳優の代わりにAIが演技を行ったりするような使用例は、今回の発表では確認できません。
映像生成AIの技術を使えば、人間のような姿や動きを持つ人物映像を作ること自体は可能です。しかし、そうした技術が存在することと、フジテレビが今回のドラマ制作で実際に使用していることは別の話です。
現時点では、俳優の演技をAIに置き換える取り組みが始まったと判断する根拠はありません。
背景や風景、爆発・事故シーンにはAIを使用
一方、背景や風景については、AIを使って制作した実例が公式に公表されています。
代表的なのが『救命病棟24時』第1話の爆発事故シーンです。
この場面では、空から撮影したように見える架空の風景をAIによって生成し、そこに煙の映像を合成しています。
実際に存在する場所を空撮した映像ではなく、AIが生成した架空の風景をドラマの背景映像として使用したことになります。
また、医療シーンの細かな映像処理や、実際の撮影だけでは再現が難しい事故現場の表現にもAIが活用されています。
ただし、事故シーン全体をAIだけで制作したのか、どの部分を従来のVFXやCGで処理したのかなど、個々のカットの詳しい制作工程まではすべて公表されていません。
今回の発表から確認できるのは、AIで生成した映像と従来の映像制作技術を組み合わせているということです。
俳優の声やセリフ、脚本もAIが担当するのか?
声やセリフについても、現時点でAIによる代替は確認できません。
例えば、俳優の声をAIで再現してセリフを話させたり、ナレーションをAI音声に置き換えたりするといった使用方法は、今回のフジテレビの公式発表には具体的な事例として掲載されていません。
脚本についても同様です。フジテレビは撮影前の準備段階から脚本や完成イメージをスタッフ間で共有すると説明していますが、これはAIが脚本を執筆しているという意味ではありません。
そのため、俳優の声やセリフ、脚本までAIが制作していると考えるのは正確ではありません。
ただし、フジテレビは今後もAI活用の幅を広げる方針を示しています。将来的に音声や脚本などの分野へ活用が拡大するかどうかについては、今後の発表を確認する必要があります。
『救命病棟24時』ではどのシーンにAIが使われたのか?
今回のニュースで注目したいのが、生成AIがすでに実際のドラマ映像に使用されているようです。
フジテレビは2026年10月期の月9ドラマ『救命病棟24時』について、AI Sandboxによる制作例を公表しました。
AIが使われた具体的な場面として、爆発事故の映像や医療シーンの映像処理などが紹介されています。
第1話の爆発事故シーンはAIが架空の空撮風景を生成
『救命病棟24時』第1話では、爆発事故の場面に登場する空撮風景がAIで生成されています。
フジテレビの公式発表によると、まずAIで架空の風景を作成し、そこに煙を合成して爆発事故の映像を制作しました。
つまり、現実の事故現場を空から撮影したのではなく、実際には存在しない風景をAIで制作し、ドラマの映像として使用しています。
このような手法であれば、実際に爆発を発生させたり、危険を伴う撮影を行ったりせずに、事故現場の雰囲気を表現できる可能性があります。
ただし、今回のシーンについて、従来の撮影方法と比較して具体的にいくらの制作費を削減できたのかは公表されていません。
実際にAIで制作された爆発事故シーンの画像は、フジテレビの公式発表ページで確認できます。
医療シーンや撮影前の完成イメージにもAIを活用
『救命病棟24時』では、爆発事故の映像以外にもAIが使われています。
例えば、医療シーンの細かな映像処理や、実際の撮影だけでは再現が難しい事故現場の表現などです。
さらに、撮影を始める前の準備段階でもAIを活用しています。
具体的には、監督が思い描いている映像を生成AIで画像や動画として可視化し、その完成イメージを制作スタッフや技術スタッフで共有しています。
文章や口頭だけで説明するよりも、実際の映像に近い形でイメージを共有できれば、撮影方法や映像処理の方向性を事前に検討しやすくなります。
また、制作担当者は、災害シーンや海外を舞台にしたシーンなどでも、AIが映像表現の可能性を広げていると説明しています。
このように、今回のAI導入は放送される映像そのものだけでなく、撮影前の準備やスタッフ間の意思疎通にも利用されています。
どの生成AIツールを使っているのか?
今回の取り組みで、具体的にどの生成AIサービスや動画生成モデルを使用しているのかも気になるところです。
しかし、2026年11月5日のフジテレビと制作協力会社ANDENTの発表では、『救命病棟24時』の映像制作に使用した生成AIモデルの具体的な名称までは確認できません。
そのため、特定の動画生成AIサービスを使用したと断定することはできません。
なお、ANDENTのAI開発ユニット「stu」が制作に参加していることは公表されています。実際の制作では、AIの専門スタッフとドラマ制作スタッフが連携し、作品に合わせた生成AIの活用方法を検証しています。
参考:ANDENT公式発表「AI Sandbox」プロジェクト(2026年11月5日)
AI導入の狙いは制作費削減なのか?最大70〜80%の工数削減を発表
フジテレビがドラマ制作に生成AIを導入する理由として、制作費の削減を考える人もいるでしょう。
実際、フジテレビは今回の発表で、生成AIの活用によって一部の映像制作工程を大幅に効率化できたと説明しています。
ただし、公式に確認できた作業効率の改善と、制作費削減を目的としているのではないかという考察は分けて考える必要があります。
作業工数を最大70〜80%削減したのはどの部分なのか?
フジテレビは、生成AIを使用した一部の映像制作工程について、従来の方法と比較して作業工数を最大70〜80%削減できたと発表しました。
これは大きな効率化といえますが、注意したいのは数字の対象です。
フジテレビは、この70〜80%という数値について、特定の制作工程で確認された結果であり、作品全体の制作費削減率や制作工程全体の平均削減率を示すものではないと明記しています。
また、具体的にどの工程で最大70〜80%の削減を達成したのか、その工程に従来どれくらいの作業時間が必要だったのかについても、今回の発表では詳しく示されていません。
例えば、従来10時間かかっていた作業を80%短縮できたと仮定すれば、作業時間は2時間になります。しかし、これは数字の意味を説明するための仮定であり、フジテレビが実際に10時間の作業を2時間に短縮したと発表したわけではありません。
「一部工程の作業工数を最大80%削減」と「ドラマ全体の制作費を80%削減」は、まったく異なる内容です。
ドラマ全体の制作費はどこまで安くなるのか?
ここからは、今回の発表内容を踏まえた考察です。
生成AIを利用することで、従来必要だった撮影や映像制作の一部を省略・効率化できれば、制作費を抑えられる可能性があります。
例えば、架空の都市や事故現場を映像に登場させたい場合、実際の撮影場所を探したり、大規模なセットを制作したり、CGで背景を作り込んだりする方法が考えられます。
こうした工程の一部を生成AIで代替できれば、撮影や映像処理に必要な作業量を減らせる場合があります。
一方で、AIを導入すれば制作費がほとんど必要なくなるというわけではありません。
AIツールの利用料、専門スタッフの人件費、生成映像の修正、映像の品質確認、実写との合成、権利関係の確認など、新たな作業や費用も発生します。
また、俳優の出演、撮影スタッフ、衣装、美術、照明、音響など、実写ドラマを制作するための多くの工程が今回のAI導入によって不要になると発表されたわけでもありません。
そのため、制作費を効率化できる可能性は十分にありますが、フジテレビがドラマの制作費をどこまで削減しようとしているのか、具体的な削減目標や金額は現時点で公表されていません。
| 制作工程 | AIで期待できる効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 背景・風景制作 | 一部のロケやCG制作を代替できる可能性 | 実写との整合性や修正作業が必要 |
| 事故・災害シーン | 特殊な撮影や複雑な映像処理を減らせる可能性 | 映像の品質や安全性の確認が必要 |
| 撮影前のイメージ制作 | 準備や打ち合わせを効率化 | 演出意図に合うまで調整が必要 |
| 映像の細かな修正 | 一部の作業時間を短縮できる可能性 | 専門スタッフによる仕上げが必要 |
※上記は生成AIの導入によって考えられる経済的効果を整理したもので、フジテレビが各工程の具体的な削減金額を発表したものではありません。
また、削減した作業時間や予算を別のシーンの制作に振り向けることも考えられます。
例えば、背景映像の制作に必要な時間を短縮できれば、その分を俳優の撮影や編集作業、映像の仕上げに使うという選択肢もあります。
つまり、生成AIによる効率化の成果は、必ずしも制作費の削減だけに使われるとは限りません。
フジテレビが今後、制作費の圧縮と作品の品質向上のどちらに重点を置いていくのかは、実際の運用や追加発表を確認する必要があります。
AIを使うことでドラマ制作にどんなメリットがあるのか?
フジテレビは今回の発表で、生成AIの導入目的として、映像表現の幅を広げることや、制作現場の負担を軽減すること、安全性を高めることなどを挙げています。
公式発表では、AIの活用を単なる効率化にとどめず、従来の映像制作技術と組み合わせて作品の品質を高める取り組みとして位置付けています。
危険な撮影や実現が難しい映像をAIで補える
AI導入のメリットとして、まず考えられるのが撮影方法の選択肢が増えることです。
例えば、大規模な事故や災害を再現する場面では、通常の撮影では安全対策や撮影場所の確保などが必要になります。
また、海外の都市を舞台にしたシーンや、現実には存在しない風景を登場させたい場合も、撮影場所や映像制作の方法に制約が生じることがあります。
こうした場面で生成AIを活用できれば、実際に撮影することが難しい映像を制作するための新しい選択肢になります。
ただし、AIで制作した映像が必ず実写や従来のCGより優れているというわけではありません。作品の内容や求められる品質によって、適した制作方法は異なります。
フジテレビも、実写撮影、VFX、CG、生成AIなどを使い分ける方針を示しています。
撮影前の打ち合わせや映像制作を効率化できる
もう一つのメリットは、制作スタッフの間で完成イメージを共有しやすくなることです。
ドラマの撮影では、監督が思い描く映像を、カメラマン、美術スタッフ、映像処理担当者など、多くの関係者と共有する必要があります。
生成AIで事前に画像や映像を作成できれば、どのような構図や背景にしたいのか、実写とCGをどのように組み合わせるのかなどを具体的に検討できます。
その結果、撮影前に関係者の認識をそろえやすくなり、後から大きな修正が必要になるリスクを減らせる可能性があります。
また、今回のプロジェクトではAIを使用した一部工程で作業工数の削減も確認されています。
制作現場の負担を軽減しながら、作品の品質を高められるかどうかが、フジテレビにとって今後の重要な課題になると考えられます。
俳優や制作スタッフの仕事はAIに置き換わるのか?
生成AIの導入によって制作時間や作業量が減るのであれば、俳優や制作スタッフの仕事も減っていくのではないかと心配する人もいるでしょう。
ただし、今回のフジテレビの公式発表では、AI導入によって俳優の出演を減らす計画や、制作スタッフを削減する具体的な方針は示されていません。
現時点で確認できるのは、従来の制作スタッフとAIの専門スタッフが協力して、新しい制作方法を検証しているということです。
AIで俳優の出演や撮影を減らす計画は発表されていない
今回の発表は、俳優の演技をAIで代替する取り組みではなく、主に映像制作の方法を増やすためのものです。
少なくとも、俳優本人の顔をAIで再現して出演シーンを制作することや、AIによって俳優の出演料を削減することなどは、具体的な導入方針として公表されていません。
ただし、将来的に人物生成AIの活用が広がれば、俳優の肖像や声の利用、本人の同意、演技の権利など、さまざまな課題が生じる可能性があります。
こうした問題は今回のフジテレビの取り組みで実際に発生したと確認されたものではありませんが、今後のAI活用を考えるうえでは重要な論点です。
映像制作スタッフの仕事内容は変わる可能性がある
一方、背景制作や映像処理など、AIの導入によって一部の作業内容が変化する可能性はあります。
例えば、従来はCGなどで一から制作していた背景の一部をAIで生成できるようになれば、制作方法や作業時間が変わることは考えられます。
ただし、AIが生成した映像をそのまま放送できるとは限りません。作品の世界観に合っているか、映像に不自然な部分がないか、俳優の実写映像と違和感なく組み合わせられるかなど、専門スタッフによる確認や調整が必要になります。
今回のAI Sandboxでも、ドラマのディレクターやプロデューサー、技術スタッフに加え、ANDENTのAIスーパーバイザーやAIデザイナーが制作に参加しています。
つまり、AIの導入によって従来の作業が減る可能性がある一方、AIを使いこなすための新しい役割や専門性が必要になることも考えられます。
今後、AI導入が実際の人員配置や制作現場の働き方にどのような影響を与えるのかについては、まだ十分な情報がありません。作業効率の改善がそのまま雇用削減につながると断定することはできません。
2027年にはフジテレビの全ドラマがAI制作になるのか?
フジテレビは2027年10月をめどに、同社が制作するすべてのドラマで、作品やシーンに応じてAIを活用できる体制を整える方針です。
ただし、これは2027年10月からすべてのドラマをAIだけで制作するという意味ではありません。
フジテレビが目指しているのは、必要な場面に応じて、実写撮影や従来の映像処理に加え、生成AIも制作手法として選択できる環境を整えることです。
今回発表された主な計画は、次のとおりです。
| 時期 | 取り組み |
|---|---|
| 2026年7月 | デジタル戦略統括室内にAIセンターを新設 |
| 2026年9月 | 湾岸スタジオでAI Sandboxの運用を開始 |
| 2026年10月期から | 毎クール1本以上のドラマを「AI強化枠」に設定 |
| 2026年11月5日 | AI Sandboxの取り組みを公式発表 |
| 2027年10月をめど | フジテレビ制作の全ドラマでAIを活用できる体制を整備 |
| 2029年度 | フジ・メディア・ホールディングス全体で高度なAI活用機能の保有を目指す |
フジテレビは現在、地上波のゴールデン・プライム帯で年間16本の連続ドラマを制作しています。
2026年10月期からは、毎クール1本以上の作品を「AI強化枠」に設定し、実際のドラマ制作を通じてAIの活用方法を検証する計画です。
その中で得られた技術や制作ノウハウを社内で共有し、2027年10月ごろまでに、より多くの作品でAIを利用できる体制を整えていきます。
さらに、フジ・メディア・ホールディングス傘下の映像関連企業にも取り組みを広げ、2029年度にはグループ全体で国内トップベンダーレベルのAI活用機能を持つことを目標としています。
ただし、各作品で具体的にどの場面にAIを使用するのか、全ドラマでどの程度の映像がAI制作になるのかについては、現時点で発表されていません。
AIで制作した映像の著作権や視聴者への説明はどうなるのか?
生成AIを使った映像がドラマの本編に使用されるようになると、制作の効率化や映像表現だけでなく、著作権や視聴者への説明についても疑問が生じます。
特に、AIが生成した映像と実写映像を自然に組み合わせられるようになるほど、視聴者がどの部分にAIが使われたのかを見分けることは難しくなると考えられます。
AIを使ったシーンは視聴者に表示されるのか?
今回の『救命病棟24時』では、フジテレビが公式発表の中で、AIによって制作した爆発事故シーンの画像を公開しています。
一方、ドラマ本編の放送中にAIを使用したことを表示するのか、エンドクレジットにAI制作の情報を掲載するのか、あるいは公式サイトなどで使用箇所を案内するのかについては、今回の発表だけでは確認できません。
そのため、フジテレビが今後すべてのAI使用シーンを視聴者に明示する方針なのかは、現時点では不明です。
AI映像をどのように視聴者へ説明していくのかは、今後のドラマ制作で注目したい点の一つです。
実写とAIを組み合わせた映像が増えていく中で、使用した技術や制作方法をどこまで公開するのかによって、視聴者の受け止め方も変わる可能性があります。
AI生成映像の著作権や俳優の肖像はどう扱われるのか?
生成AIを商業作品に利用する場合は、著作権などの権利関係にも注意が必要です。
文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、生成AIの開発や利用に関する著作権上の論点を整理しています。
AIが生成した画像や映像については、生成の過程や既存の著作物との関係、人間がどのように創作へ関与したのかなど、具体的な事情によって法的な評価が異なる場合があります。
また、実在する俳優の顔や声をAIで再現するような利用が行われる場合には、著作権以外にも肖像や本人の同意、契約などに関する問題が生じる可能性があります。
ただし、今回のフジテレビのAI導入によって著作権侵害が発生したという情報は確認できません。また、俳優の肖像や声を本人の許可なくAIで再現しているといった事実も確認されていません。
現時点では、生成AIの活用が広がる際の一般的な課題として、権利処理や制作物の管理方法にも注目していく必要があります。
参考:文化庁「AIと著作権について」
フジテレビ以外でもドラマにAIを使っているのか?TBS『VIVANT』の事例
実写ドラマの制作に生成AIを取り入れる動きは、フジテレビだけではありません。
TBSも2025年10月30日、2026年放送のドラマ『VIVANT』続編について、Googleの動画生成AI「Veo 3」を使用した映像を地上波ドラマ本編に導入すると発表しています。
TBSが説明した導入目的は、映像制作の業務効率を高め、クリエイターが創造的な作業に集中できる時間を増やすことです。
フジテレビとTBSの発表を比較すると、どちらも生成AIを従来の制作方法に加え、作業の効率化と作品の品質向上につなげようとしていることが分かります。
ただし、両社が同じ生成AIツールを使用していると確認されたわけではありません。TBSは『VIVANT』でのVeo 3の使用を公表していますが、フジテレビは今回の『救命病棟24時』で利用した具体的な生成AIモデル名を明らかにしていません。
また、フジテレビとTBSのどちらについても、AIの導入によって俳優の出演を減らすことや、制作費を大幅に削減することが最大の目的だと断定できる情報はありません。
一方、複数のテレビ局が実際のドラマ制作に生成AIを取り入れ始めていることから、今後は映像制作の方法そのものが変化していく可能性があります。
参考:TBS公式「『VIVANT』続編でVeo 3によるAI生成映像を使用」(2025年10月30日)
まとめ|AI導入は背景や特殊映像が先行、制作費への効果は今後も注目
2026年11月5日、フジテレビは実写ドラマ制作に生成AIを本格導入していることを発表しました。
すでに『救命病棟24時』など複数のドラマで活用されており、第1話の爆発事故シーンでは、AIが生成した架空の空撮風景に煙を合成する手法が使われています。
また、医療シーンの細かな映像処理や、撮影前に完成イメージを作成してスタッフ間で共有する作業などにもAIが利用されています。
一方、俳優の顔や演技、身体の動き、声、セリフ、脚本などをAIに置き換えるという具体的な方針は、今回の公式発表では確認できません。
フジテレビが現在取り組んでいるのは、主に映像表現の幅を広げ、制作現場の負担を軽減するためのAI活用です。
制作費については、生成AIを使った一部の映像制作工程で作業工数を最大70〜80%削減できたことが明らかになっています。
ただし、この数字はドラマ全体の制作費が70〜80%削減されたことを意味するものではありません。実際の制作費削減額や今後の削減目標も公表されていません。
AIによって撮影や映像処理の一部を効率化できれば、経費削減につながる可能性があります。一方、削減できた時間や費用を別の映像表現に使い、作品の品質を高めることも考えられます。
フジテレビは2027年10月をめどに、制作するすべてのドラマで必要に応じてAIを活用できる体制を整える計画です。ただし、ドラマ全編をAIで制作する方針ではありません。
今後は、どの作品のどの場面でAIが使われるのか、実際に制作費や作業時間がどれだけ変化するのか、俳優やスタッフの仕事にどのような影響が出るのかが注目点になります。
今回の発表は、生成AIによって人間の俳優が不要になるというニュースではなく、実写ドラマの制作方法に新しい選択肢が加わったという動きとして捉えるのが適切でしょう。
主な参考資料と確認日
情報確認日:2026年11月6日。フジテレビの2026年11月5日付公式発表、制作協力会社ANDENTの同日付発表、TBSの2025年10月30日付公式発表、文化庁のAIと著作権に関する資料を確認しました。
フジテレビが生成AIを活用したと確認できるのは、『救命病棟24時』第1話の架空の空撮風景を使用した爆発事故シーン、医療シーンの細かな映像処理、実写撮影では再現が難しい事故現場の表現、撮影前の完成イメージ制作などです。これら以外の作品やシーンについて、具体的なAI使用箇所がすべて公表されているわけではありません。
俳優の顔・演技・身体の動き・声・セリフ・脚本をAIで代替する計画については、今回の公式発表で確認できませんでした。ただし、今後もこうした技術を使用しないと発表されたわけではありません。
作業工数の最大70〜80%削減は、生成AIを使用した特定の映像制作工程に関する検証結果です。ドラマ全体の制作費削減率や制作工程全体の平均削減率を示すものではありません。具体的な制作費削減額、削減目標、俳優やスタッフの人員削減計画についても、今回の公式発表では確認できません。
記事内で説明したロケ撮影・セット制作・CG制作などの費用削減の可能性や、制作現場の仕事内容への影響については、公式発表を踏まえた考察です。フジテレビが実際にこれらの費用を削減したと確認されたものではありません。
2027年10月をめどとした全ドラマへのAI活用体制の整備、2029年度のグループ全体への展開は、2026年11月5日時点の計画です。今後の公式発表によって、使用範囲や実施時期などが変更される可能性があります。
- フジテレビ公式「フジテレビがAI活用の実験場『AI Sandbox』を設置 ドラマ制作と技術が連携し、新たな映像表現の可能性を追求」(2026年11月5日)
- 株式会社ANDENT「ANDENTがフジテレビと『AI Sandbox』プロジェクトを発表。地上波ドラマ制作での生成AI活用を推進」(2026年11月5日)
- TBS公式「2026年放送日曜劇場『VIVANT』続編 TBSドラマ初!Veo 3によるAI生成映像の使用を発表」(2025年10月30日)
- 文化庁「AIと著作権について」
- ITmedia AI+「フジテレビ、全ドラマでAI活用できる体制へ 2027年10月めど 『救命病棟24時』で先行導入」(2026年11月5日)
- Impress Watch「フジテレビ、ドラマ制作に生成AIを積極導入 27年には全ドラマ対応へ」(2026年11月5日)


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