格闘技の試合前には「計量」があります。選手が契約した体重を守っているか確認する手続きですが、RIZIN・UFC・PFL・ONEでは合格の条件や、体重を超えてしまった場合の扱いが異なります。
例えばUFCのライト級は、通常の非タイトル戦なら156ポンド(約70.8kg)まで認められる一方、タイトル戦では155ポンド(約70.3kg)以下でなければなりません。RIZINのライト級は71.0kg契約が基本で、同じ「ライト級」でも数字が違います。さらにONEのライト級は170ポンド(約77.1kg)で、体重が規定内でも、尿を使ったハイドレーションテストに不合格なら正式に計量を通過できません。
ではUFCだけが1ポンドの余裕を認めるのでしょうか。計量失敗で王座を獲得する資格はどうなるのでしょうか。また、日本のDEEP・修斗・パンクラスではどのようなルールを採用しているのでしょうか。
この記事では各団体の公開規則と2026年の実際の大会を比較し、計量の時期、1ポンド許容の理由、体重超過時の減点・キャッチウェイト・試合中止、計量後の体重回復や水抜きとの関係まで整理します。
- RIZIN・UFC・PFL・ONEの計量ルールの違い|体重・水分検査・ペナルティを比較
- そもそも前日計量とは?公開計量との違い
- RIZINの計量|体重超過は減点やノーコンテストになる?
- UFCの計量|非タイトル戦は1ポンドまで、タイトル戦は許容なし
- UFCの1ポンド許容にはどんな理由がある?
- PFLの計量|2025年の大会規則を2026年にも適用できる?
- ONEの計量|ハイドレーションテストに合格しないと試合できない?
- ONEはなぜ尿比重検査を導入?2015年の死亡事故と現在の課題
- 日本のDEEPは500g、修斗は原則規定体重、パンクラスは1ポンド許容
- アメリカのMMA団体はUFCとだいたい同じ計量なのか?
- 同じライト級でもONEとUFCでは約6.8kg違う
- 水抜きと計量後の体重回復|前日より体重が増えるのはなぜ?
- 計量を失敗すると試合は必ず中止?報酬や王座はどうなる?
- 実例で比較|安保瑠輝也・オリベイラ・RIZINの計量超過
- RIZIN・UFC・PFL・ONEの計量ルールのまとめ
RIZIN・UFC・PFL・ONEの計量ルールの違い|体重・水分検査・ペナルティを比較
まずは4団体の制度を比較します。ここで示すのは通常のMMA公式戦における基本的な考え方です。特にPFLは大会形式や開催地で条件が変わり、RIZINも契約内容によって異なるため、個別の試合では大会公式発表が優先されます。
| 比較項目 | RIZIN | UFC | PFL | ONE |
|---|---|---|---|---|
| 計量のタイミング | 前日 | 前日 | 前日 | 前日 |
| 正式な合格条件 | 契約体重 | 契約体重 | 契約体重 | 体重と尿比重 |
| 水分検査 | なし | なし | なし | 尿比重1.025以下が必須 |
| 非タイトル戦の許容 | 基本は契約体重どおり | 通常1ポンドまで許容 | 大会規定による。2025年WTは原則1ポンドまで許容 | 上限体重と水分検査の両方を満たす |
| 体重超過時 | 減点・特殊裁定・契約変更など | 相手と協議・報酬譲渡・中止など | 相手と協議・報酬譲渡・中止など | 水分再検査後にキャッチウェイト交渉など |
「PFLの非タイトル戦は必ず1ポンドまで」「日本のMMA団体はすべて許容なし」などと一律に決めることはできません。UFCは非タイトル戦の1ポンドを公式に案内しており、ONEは尿比重の検査を義務付けています。PFLについては2025年ワールドトーナメントの規則と2026年の大会運営を分けて説明します。
公式資料:UFC・計量と階級の解説、ONE・Event Week Protocol、PFL・2025年ワールドトーナメント規則、RIZIN・2026年10月大会の超過対応。
そもそも前日計量とは?公開計量との違い
格闘技の前日計量は、試合の前に選手の体重が契約条件を満たしているか確認するために行われます。UFCでは試合前日の現地時間9〜11時ごろに公式計量が行われ、その後、観客向けに選手が体重計に乗る「セレモニアル計量」やフェイスオフが実施されることがあります。
試合の出場条件を判定するのは公式計量です。その後のセレモニアル計量は、主に観客やメディアに向けた催しです。ONEは原則として試合の24〜48時間前に水分検査と体重計量を組み合わせて実施します。RIZIN、DEEP、修斗、パンクラスなどでも前日計量が広く行われていますが、実施時刻や再計量の受付時間は団体・大会で異なります。
計量当日に上限を満たしても、その時点の体重のまま翌日の試合を行うとは限りません。計量から試合までの間に食事や水分補給をするため、試合開始時には体重が増えている選手もいます。この点は後の項目で説明します。
RIZINの計量|体重超過は減点やノーコンテストになる?
RIZINでは前日など指定日時の公式計量で、契約した体重以下に収めることが原則です。フライ級57.0kg、バンタム級61.0kg、フェザー級66.0kg、ライト級71.0kgなどの体重で試合を組んでいます。UFCのように「非タイトル戦は一律1ポンド超過まで合格」とする制度ではありません。
計量オーバーが起きた場合、契約体重をクリアした相手選手や主催者との協議を経て、試合を中止するか、条件付きで行うかなどを判断します。
2026年10月3日の「RIZIN LANDMARK 16 in NAGASAKI」では、100gオーバーの山本聖悟選手にイエローカード1枚・減点1、950gオーバーのKAKERU選手にレッドカード1枚・減点2が適用されました。どちらも規定体重をクリアした選手が勝った場合のみ公式勝利とし、規定を超えた選手が勝つか引き分けた場合はノーコンテストとする条件で実施されました。
| RIZIN・2026年10月の例 | 超過量 | 実施条件 |
|---|---|---|
| 山本聖悟 | 100g | イエローカード1枚・減点1、特別裁定 |
| KAKERU | 950g | レッドカード1枚・減点2、特別裁定 |
| 堀江圭功 vs. 宇佐美正パトリック | 当初71.0kg契約 | 協議により72.65kg契約へ変更し通常ルール |
ただし、計量オーバーしたら必ず減点されるわけではありません。同大会の堀江圭功対宇佐美正パトリックは、公式計量時の協議で契約を71.0kgから72.65kgへ変更し、通常ルールで行われました。また、2026年6月の仙台大会でも、契約体重を変更して実施した試合があります。
つまりRIZINでは、①変更前の体重条件のまま特別裁定付きで行うケースと、②両陣営が合意して契約体重自体を変更するケースを区別する必要があります。具体的な処分、減点、結果の扱いは大会ごとの正式な発表を確認してください。
出典:RIZIN公式・10月大会の体重超過と試合条件、RIZIN公式・6月大会の契約体重変更。
UFCの計量|非タイトル戦は1ポンドまで、タイトル戦は許容なし
UFCでは試合前日の公式計量で、選手が階級ごとの上限を守っているか確認します。非タイトル戦では通常1ポンド(約0.45kg)の許容幅がありますが、タイトル戦にはその許容幅がありません。
ライト級なら、非タイトル戦の上限は156ポンド(約70.8kg)、タイトル戦は155ポンド(約70.3kg)以下です。フェザー級なら通常戦は146ポンド(約66.2kg)、タイトル戦は145ポンド(約65.8kg)以下となります。
| UFCの階級 | タイトル戦の上限 | 非タイトル戦の通常上限 |
|---|---|---|
| フライ級 | 125ポンド(約56.7kg) | 126ポンド(約57.2kg) |
| バンタム級 | 135ポンド(約61.2kg) | 136ポンド(約61.7kg) |
| フェザー級 | 145ポンド(約65.8kg) | 146ポンド(約66.2kg) |
| ライト級 | 155ポンド(約70.3kg) | 156ポンド(約70.8kg) |
| ウェルター級 | 170ポンド(約77.1kg) | 171ポンド(約77.6kg) |
計量に失敗した場合、開催地の競技委員会の許可や対戦相手との合意などを前提に、キャッチウェイトで試合を行うことがあります。その際、体重超過した側がファイトマネーの一部を相手に譲渡する場合もあります。条件が整わなければ試合は中止されます。
UFCのタイトル戦で規定体重を超えた選手は、試合が実施されてもその試合で王座を獲得する資格を失います。2020年、デイブソン・フィゲイレードはフライ級王座戦の計量で127.5ポンド(約57.8kg)となり、相手に勝ったものの王者にはなれませんでした。また2022年、チャールズ・オリベイラはライト級王座戦で155.5ポンド(約70.5kg)となり、王座を失っています。
参考:UFC公式・階級ごとの上限、許容幅、体重超過の実例。
UFCの1ポンド許容にはどんな理由がある?
「155ポンド以下の階級なのに、なぜ156ポンドでも合格になるのか」と不思議に思う人もいるかもしれません。この1ポンドの許容はUFC独自の発明ではなく、米国のMMA界で以前から使われていた慣行です。
米国などのボクシング・MMAの競技委員会で構成されるAssociation of Boxing Commissions and Combative Sports(ABC)は、2009年の統一ルールに関する委員会報告で、非タイトル戦における1ポンドの許容を従来の慣行として継続するよう推奨しました。ただし、試合契約や開催地の規則で認められる場合に限るという条件を付けています。
制度上の考え方は、通常戦では小さな許容幅を設ける一方、王座が懸かる試合には階級上限を厳密に適用するという違いです。ただし「なぜちょうど1ポンドなのか」について、医学的に最適な数値だからといった制定理由が公式に確認できているわけではありません。「体重計の誤差を補うため」「脱水を防ぐため」といった説明を、確定した制定理由として扱うことは避けます。
なお、1ポンドは約0.45kgで、500gよりわずかに小さい値です。国内団体の許容が「0.5kg」と定められている場合は、厳密には同じ数値ではありません。
出典:ABC・MMA統一ルールに関する委員会報告(2009年)。
PFLの計量|2025年の大会規則を2026年にも適用できる?
PFLも米国のMMAで一般的な階級区分を使い、試合前の公式計量で契約体重を確認します。ただし、PFLについては大会の年度や方式を分けて見る必要があります。
PFLが公開している「2025 World Tournament Rules」は、2025年ワールドトーナメント専用の規則です。この規則では1回戦と準決勝に1ポンドの許容があり、決勝にはありません。計量を失敗した選手が試合を認められた場合、出場報酬の20%を相手へ譲渡する規定がありました。さらに決勝では、失敗した選手は勝ってもその大会のトーナメント王者には認定されませんでした。
一方、2026年のPFLは従来の世界トーナメント中心の大会構成から、公式ランキングや王座戦などを重視した運営へ移行しています。2026年1月には公式ランキングの導入を発表しました。2025年の決勝ルールや過去のリーグ戦の勝ち点ペナルティを、2026年に開催されるすべてのPFL大会にそのまま当てはめるのは誤りです。
2026年の大会でも体重超過によるキャッチウェイト変更やファイトマネー譲渡の実例がありますが、実際の扱いは開催地の競技委員会、試合の契約、タイトル戦かどうかなどで変わります。特にPFL EuropeやPFL MENAなどの地域大会もあるため、「PFLなら必ず20%」「PFLは必ず非タイトル戦で1ポンド許容」と断定せず、各大会の公式発表を確認するのが正確です。
出典:PFL公式・2025 World Tournament Rules、PFL公式・2026年1月のランキング制度発表。
ONEの計量|ハイドレーションテストに合格しないと試合できない?
ONE Championshipは他団体と異なり、水分状態を確認するハイドレーションテストと体重計量の両方を必須条件にしています。これは急激な脱水を伴う減量を抑えるために導入された制度です。
ONEの公式「Event Week Protocol」では、原則として試合24〜48時間前に検査を実施します。選手は医療担当者の監督下で尿を提出し、屈折計で尿比重を確認します。尿比重1.025以下をクリアしてから直ちに体重を測定し、規定体重内なら正式合格となります。
| ONEの検査項目 | 正式に合格する条件 |
|---|---|
| ハイドレーションテスト | 尿比重1.025以下 |
| 体重計量 | 契約階級またはキャッチウェイトの上限以内 |
| 合格する順序 | 水分検査に合格した直後に体重を測定 |
| 初回不合格の場合 | 規定の3時間内に再検査が可能 |
| 時間内に合格できない場合 | 時間外に水分検査に合格後、条件付きの試合交渉が可能 |
ONEの公式規定では、3時間の検査時間内に両方の基準をクリアできなかった場合でも、水分検査に合格した上で、相手とのキャッチウェイト交渉を行う道があります。その条件には、両選手の正式な水分検査合格時の体重が互いに105%以内であること、対戦相手が合意することなどが含まれます。不合格だった選手は報酬の一部を相手に譲渡する規定です。
つまり「体重は合っているのに尿比重が高くて不合格」「尿比重をクリアしても、今度は体重が上限を超えた」という状況が起こり得ます。2026年10月16日には、安保瑠輝也選手が「ONE SAMURAI 4」の前日計量でこうした問題に直面しました。具体的な体重と尿比重の数値は、安保瑠輝也が2戦連続で計量失敗した経緯を整理した記事で確認できます。
ただし、尿比重の合格基準を満たすことが選手の健康状態すべてを保証するわけではありません。また、尿比重の数値だけで個々の選手がどのような減量方法を取ったかを断定することもできません。
出典:ONE公式・階級とハイドレーション・計量規則。
ONEはなぜ尿比重検査を導入?2015年の死亡事故と現在の課題
ONEが独自の計量制度を導入した背景には、2015年12月に起きた選手の死亡事故があります。中国人フライ級選手のヤン・ジエンビン(Yang Jian Bing、当時21歳)が大会出場前に倒れ、12月11日に亡くなりました。ONEは当時、死因を心肺機能不全と発表し、報道では急激な減量に伴う脱水や熱中症の問題が伝えられました。
事故から約2週間後の12月23日、ONEは脱水による危険な減量を防ぐため、新しい計量制度を発表しました。選手の普段の体重と水分状態を重視し、尿比重検査を組み合わせる方式に変更したのは、同様の事故を防ぐためです。
出典:ONEの当時の公式声明(2015年12月)、MMA Fighting・新制度導入の報道。
一方、制度導入後も選手による減量や水分調整そのものがなくなったわけではありません。ONE参戦経験のあるマーク・アベラルド選手も、2024年の取材で大会週の体重・水分調整について説明しています。尿比重1.025以下に合格したことは、過去に水抜きを行っていないことや、試合当日に体重が増えないことまで証明するものではありません。
そのため、尿比重の検査だけで過度な減量を十分に防げるのかという課題は残ります。ただし、検査を通過しながら大幅に水抜きする方法が確立している、あるいは多くの選手が試合当日に何kgも体重を戻していると断定できる統計は、今回確認できていません。ONEが「水抜きを認めている」という意味でもなく、公式には脱水による危険な減量を禁止する方針を掲げています。ONEの公式計量ルールに示された尿比重と体重は、その方針を実現するための合格基準です。
日本のDEEPは500g、修斗は原則規定体重、パンクラスは1ポンド許容
日本の団体でも、RIZIN以外は全て同じ制度というわけではありません。DEEP、修斗、パンクラスの公開規則と2026年の実例を比べると、むしろUFCに近い部分もあります。
| 団体 | 非タイトル戦の許容 | 計量失敗後の扱い |
|---|---|---|
| DEEP | 階級制の通常戦では0.5kg | 条件付き実施の場合は減点と特殊裁定 |
| 修斗 | 原則規定体重。2026年には一部試合で1ポンドを試験導入 | 猶予時間中の再計量、契約変更、各ラウンド減点など |
| パンクラス | チャンピオンシップ以外の階級制試合で0.45kg | 再計量、相手の承認を得たキャッチウェイト、失格など |
DEEP:DEEP/DEEP JEWELSの公開MMA規則では、タイトル戦とキャッチウェイト戦を除く通常の階級制試合に0.5kgの許容があります。原則として指定時刻に公式計量を行い、公開規則では計量開始から3時間が受付枠です。条件付きで試合を行う場合、超過量が0.5kg未満なら減点1、0.5kg以上なら減点2、体重を守った相手が勝った場合だけ正式な勝利とする特別な裁定が定められています。2026年6月のDEEP NAGOYAでは、規定を500g超えた選手の試合が減点2で実施されました。
修斗:日本修斗協会のプロ公式規則では、原則として試合開始24時間前以内の計量で規定体重を守ります。超過した選手は主催者の指定する2〜6時間などの猶予内で再計量でき、条件が整えば契約体重の変更により試合を行います。その場合、体重を守れなかった選手は各ラウンド1ポイント減点されます。2026年3月30日の「Lemino修斗.4」では、木下憂朔対ヴィクター・バレンズエラ、藤田大和対ルケ・コンセイソンの2試合でプロモーターの意向による1ポンド許容を試験的に導入したと公式に記載されています。修斗全体の標準ルールが1ポンド許容に変わったという意味ではありません。
パンクラス:2025年改訂の公式規則により、チャンピオンシップ以外の階級制試合では0.45kg(1ポンド相当)を許容しています。タイトル戦には許容がなく、契約体重で行う特別な試合にも許容はありません。再計量は公式計量の開始から2時間以内とされ、再計量でも不合格なら相手の承認などを条件にキャッチウェイトで行う場合があります。
このため、「日本のMMAは全団体で体重超過を1gも認めない」といった説明は正しくありません。
出典:DEEP/DEEP JEWELS公式MMA規則(公開版)、DEEP公式サイト、日本修斗協会のプロ公式規則、修斗・2026年3月30日大会の公式計量結果、パンクラス・2025年改訂公式ルール。
アメリカのMMA団体はUFCとだいたい同じ計量なのか?
米国のMMA大会では、UFCのように選手を階級に分け、前日に体重を確認し、開催地のアスレチック・コミッションの承認を受けて試合を行う方式が広く見られます。ONEのように全選手が尿比重1.025以下に合格することを正式計量の共通条件とする制度は、一般的な米国MMA大会の標準ではありません。
一方、「アメリカの団体はすべてUFCと同じ」という説明は正確ではありません。非タイトル戦の1ポンド許容は米国に広く見られる慣行ですが、タイトル戦に許容がある団体もあります。例えば米国のCage Fury Fighting Championships(CFFC)は、2026年4月の公式計量でタイトル戦にも1ポンドの許容を認めたと明記しています。
つまり、大枠ではUFC型の前日計量・階級制度が広く使われていても、許容体重やタイトル戦、再計量、ペナルティの規則は団体・開催地によって違うということです。米国で開催されるから全て統一のルールになるわけでもありません。
出典:ABCの統一ルール委員会報告、CFFC公式・2026年4月の暫定王座戦の計量。
同じライト級でもONEとUFCでは約6.8kg違う
格闘技の階級名は世界で完全に統一されているわけではありません。ONEは水分を極端に抜かないことを前提とした独自の階級区分を設けているため、UFC・PFLと比べると階級名に対する体重上限が高くなっています。
| 階級 | RIZIN | UFC・PFLの一般的な上限 | ONE |
|---|---|---|---|
| フライ級 | 57.0kg | 125ポンド(約56.7kg) | 135ポンド(約61.2kg) |
| バンタム級 | 61.0kg | 135ポンド(約61.2kg) | 145ポンド(約65.8kg) |
| フェザー級 | 66.0kg | 145ポンド(約65.8kg) | 155ポンド(約70.3kg) |
| ライト級 | 71.0kg | 155ポンド(約70.3kg) | 170ポンド(約77.1kg) |
| ウェルター級 | 大会の契約による | 170ポンド(約77.1kg) | 185ポンド(約83.9kg) |
表のUFC・PFLは階級自体の上限です。非タイトル戦の1ポンド許容は加えていません。またPFLでは大会によって使用する男女の階級が異なり、RIZINも全階級が同じ頻度で開催されるわけではありません。
とりわけライト級は、UFC・PFLの155ポンド(約70.3kg)に対してONEは170ポンド(約77.1kg)で、約6.8kgの差があります。団体間で選手を比較するとき、同じライト級という名前だけで同じ体格と判断できないことが分かります。
なおDEEP・修斗・パンクラスのライト級上限は70.3kgを基本としています。
水抜きと計量後の体重回復|前日より体重が増えるのはなぜ?
MMAの選手が試合前に体重を減らす方法には、長期的な食事・運動による体重管理のほか、短期間に体内の水分量が変わることも関係します。特に「水抜き」と呼ばれる急激な脱水を伴う減量は、健康や競技の安全性に関わるため注意が必要です。
前日計量を採用する大会では、公式計量のあと試合までに食事や水分補給をするため、公式計量の体重と試合当日の実際の体重が異なることがあります。計量時に70kgだったからといって、翌日の試合時も必ず70kgという意味ではありません。
ただし、試合当日に何kgまで増えてよいかについて、RIZIN・UFC・PFLの全大会に共通した「増加は一律何kgまで」という数字はありません。開催地の競技委員会による医学的な管理や、個別大会での確認が関係します。ONEでは試合前の水分検査によって過度な脱水を防ごうとしていますが、その制度にも限界はあります。
また、尿比重の検査がない団体だから減量の健康管理をしていない、ということでもありません。ドクターチェックや競技委員会による安全上の判断など、別の仕組みが存在します。減量の具体的な水抜き手順を真似するのではなく、制度が安全と公平性の両立を目指している点を理解することが重要です。
計量を失敗すると試合は必ず中止?報酬や王座はどうなる?
計量失敗の結果は団体によって異なります。大きく分けると、①再計量で合格、②契約体重を変更して試合実施、③減点や報酬譲渡など条件付きで実施、④試合中止のような対応があります。
また、「公式の計量に合格しなかった」という事実と「その選手が勝っても公式記録として認められない」という裁定は別です。例えばRIZINやDEEPでは、体重超過した選手の勝利を公式記録に残さない特別ルールがあります。一方、UFCでキャッチウェイトが成立した試合では、通常の勝敗として記録される場合があります。
| 状況 | 起こり得る対応 |
|---|---|
| 規定時間内に再計量を通過 | 予定どおり実施 |
| 規定体重を超過・両陣営が協議 | キャッチウェイト、報酬譲渡、減点など |
| 団体の特別裁定が適用 | 超過選手が勝ってもノーコンテストになる場合 |
| 安全性・条件面で合意できない | 試合中止 |
| UFCのタイトル戦で体重超過 | 超過選手は王座を獲得する資格を失う |
王座戦についても、そのまま「どの団体でも体重超過したら同じ処分」とはなりません。UFCではタイトル戦の規定体重を超過した選手は、その試合で王座を獲得する資格を失います。DEEP・修斗・パンクラスにもそれぞれ王座に関する固有の規定があります。PFLも2025年ワールドトーナメント決勝では、超過した選手が勝っても優勝者に認定されないと明記していましたが、これはその大会専用の規定です。
観戦するときは「計量失敗」「試合成立」「勝利の公式記録」「王座獲得資格」の4つを分けて確認すると、報道を正確に理解しやすくなります。
実例で比較|安保瑠輝也・オリベイラ・RIZINの計量超過
これまでの制度の違いは、実際の試合を見比べるとよく分かります。
| 団体・選手 | 起きたこと | 規則のポイント |
|---|---|---|
| ONE・安保瑠輝也(2026年10月) | 1回目は169.4ポンド(約76.8kg)で体重は規定内も、尿比重1.0292で不合格 | 体重だけでは合格しない。試合実施可否は追加検査と交渉で判断 |
| UFC・チャールズ・オリベイラ(2022年) | ライト級タイトル戦で155.5ポンド(約70.5kg) | タイトル戦に1ポンド許容はなく、王座を失った |
| RIZIN・山本聖悟(2026年10月) | 契約体重を100g超過 | 減点1・超過側の勝利を公式記録にしない条件で試合実施 |
| 修斗・木下憂朔戦(2026年3月) | 1ポンド許容を試験的に採用 | 全大会共通規則ではなく、その大会の指定試合で採用 |
安保の個別の検査数値や試合前日に発表された状況は安保瑠輝也の計量失敗の記事で整理しています。なお、この比較表はルールの違いを示す目的のため、大会後に更新される可能性がある試合実施・勝敗の情報とは分けて記載しています。
より詳しい出典は、UFC公式、RIZIN公式、修斗公式に掲載されています。
RIZIN・UFC・PFL・ONEの計量ルールのまとめ
RIZIN・UFC・PFL・ONEはいずれも公平な体重条件で試合を行うために計量を実施していますが、その方法は同じではありません。
UFCは非タイトル戦に通常1ポンドの許容があり、タイトル戦では規定を超えた選手が王座を獲得する資格を失います。この1ポンドは米国のMMA界に以前からあった慣行です。RIZINでは基本的に契約体重どおりの計量を求め、超過時には減点・特別裁定・契約変更などを判断します。PFLは大会形式や開催地によって条件が異なり、過去のトーナメント規定を2026年の全大会に一律に適用できません。
ONEは水分状態を調べる尿比重1.025以下のハイドレーションテストと、体重の両方を合格条件にしている点が特徴です。日本でもDEEPには0.5kg、パンクラスには0.45kgの許容があり、修斗は2026年に一部試合で1ポンド許容を試験的に採用しています。
大切なのは、団体名だけでなく「何の大会か」「タイトル戦か」「契約体重はいくつか」「規定を超えた場合の正式な裁定は何か」まで確認することです。本記事も各団体の改訂や新しい大会で運用が変わった場合、公式発表に基づいて更新します。
主な参考資料と確認日
情報確認日:2026年10月16日。UFC、ONE、PFL、RIZIN、日本修斗協会、パンクラス、DEEPの公開規則や2026年の公式計量・大会結果、ABCの統一ルール検討資料を確認しました。DEEPの詳細規則は2020年改訂の公開資料を参照し、2026年の公式計量事例で運用も照合しています。PFLの2025年ワールドトーナメント規則は2026年全大会にそのまま適用されるものではありません。規則は大会・開催地・契約条件で異なり、変更される可能性があります。ポンドからkgへの換算は1ポンド=0.45359237kgとして小数第1位に丸めています。
- UFC公式:Understanding UFC Weight Classes(階級・前日計量・1ポンド許容・王座戦)
- Association of Boxing Commissions:Committee Report on Unified Rules for MMA(1ポンド許容の慣行、2009年)
- ONE Championship公式:Martial Arts/Event Week Protocol(尿比重・体重・キャッチウェイト)
- ONE Championship・2015年12月の選手死亡に関する公式声明(Sherdog転載)
- MMA Fighting:2015年12月23日の新計量制度導入の報道
- Fairtex Store:ONE参戦選手による体重・水分調整の説明(2024年)
- PFL公式:2025 World Tournament Rules(当時の1ポンド許容・報酬譲渡・決勝規定)
- PFL公式:2026年1月の公式ランキング導入発表
- RIZIN公式:RIZIN LANDMARK 16 in NAGASAKI(2026年10月の減点・特別裁定・契約変更)
- RIZIN公式:2026年6月大会の計量結果とキャッチウェイト変更
- DEEP/DEEP JEWELS Mixed Martial Arts公式ルール(公開版PDF、2020年改訂)
- DEEP/DEEP JEWELS公式サイト(2026年の大会・計量情報)
- 日本修斗協会:ISC認定プロフェッショナル修斗公式ルール
- 日本修斗協会:2026年3月30日「Lemino修斗.4」計量結果と1ポンド試験導入
- 日本修斗協会:2026年度下半期ルール改正事項(10月6日)
- パンクラス公式:2025年改訂MMAルール(0.45kg許容・再計量・キャッチウェイト)
- CFFC公式:2026年4月のタイトル戦での1ポンド許容例

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