2026年9月27日、WBC世界バンタム級王者・井上拓真選手との再戦に臨んだ那須川天心選手。
7回にはダウンを奪いましたが、最終結果は116-111、116-111、114-113の0-3判定負けとなりました。
試合後のインタビューでは
「負けた気がしていない」
「ポイントゲームで負けた」
といった言葉が注目され、一部では「負けを認めていないように聞こえる」「採点への不満を口にしているのではないか」といった批判的な反応も出ています。
ただし、実際のインタビューを確認すると、那須川選手は「ボクシングで負けた」とも話しており、質問と回答の前後を含めて見ると、一部分だけを切り取った場合とは受ける印象も変わります。(nikkansports.com)
また、過去のボクシングの試合後インタビューでは、自分はポイントを取ることが得意だと語っていた一方、井上選手との初戦では「経験の差」「ボクシングの深みの差」と敗因を認めていました。(nikkansports.com) (oricon.co.jp)
この記事では、今回の試合後インタビューと過去の発言を並べ、那須川天心選手の考え方にどのような共通点や違いがあるのかを整理します。
那須川天心の試合後コメントはなぜ批判?過去のインタビューと比較
井上拓真との再戦後に那須川天心は何を話したのか?
まずは今回の試合後インタビューを確認します。
ニュースやSNSでは「ポイントゲームで負けた」などの短い言葉が取り上げられていますが、実際には記者からさまざまな質問を受ける中で出てきた発言です。
試合終了時には自分なりの手応えがあった
那須川選手は、試合終了時点で自分ではどのような感覚だったのかを聞かれています。
記者:「ポイントについてはご自身ではどう感じていたか」
那須川天心:「自分の中ではすごく全てやったぞという感じが出たのではないかなと思いました」
https://ccnn.co/624829/
さらに、自分では勝った感覚だったのかという質問に対しては、井上選手へ与えたダメージについて説明したうえで、最終的にはボクシングで負けたという認識も示しています。(ccnn.co)
今回の会見を考えるうえでは、この「自分では手応えがあった」という感覚が一つの前提になっています。
「負けた気がしていない」は限界を聞かれた時の回答
今回、特に注目されたのが「負けた気がしていない」「ポイントゲームで負けた」という発言です。
ただし、この言葉が出たのは「判定結果を認めるのか」と質問された場面ではありません。
記者から、今回の敗戦によってボクサーとして限界を感じたのかと聞かれた際の回答です。
記者:「限界を感じているか」
那須川天心:「限界は感じていない。ダウンも取ったし、わからない。自分の中では負けた気がしていない」
この回答に続いて、那須川選手は「ボクシングで負けた」「ポイントゲームで負けた」という自身の感覚を説明しています。(nikkansports.com)
「負けた気がしていない」という一言だけを見る場合と、「限界を感じたのか」という質問への回答として見る場合では、受け取り方にも違いが出てきそうです。
涙については「これだけやっても無理か」という思いを語った
試合終了後、那須川選手はリングを降りる際に涙を流しました。
会見では、この涙についても質問されています。
本人は敗戦の悔しさだけでなく、約10カ月間にわたって再戦へ向けて準備してきた思いについて説明。
「何が何だか分からない」という状態であることや、これだけ取り組んでも勝てなかったという悔しさを口にしています。(nikkansports.com)
今回の涙については、判定への不満だけではなく、再戦へ向けて積み重ねてきた時間や周囲への思いも含まれていたようです。
8ラウンドの採点にも戸惑いを見せた
今回の試合では7回に那須川選手が井上選手からダウンを奪いました。
しかし、その直後の8回については3人のジャッジ全員が井上選手を支持しています。
那須川選手は、この8回を井上選手に取られたことについて、自分の感覚では理解しにくいと説明しています。
一方で、試合直後にはまだ映像を見返していないことにも触れており、自分のリング上での体感とジャッジの評価がなぜ違ったのか整理できていない状態だったようです。(efight.jp)
「ポイントの取り方が分からない」発言も注目された
那須川選手は試合後、今回どのような勝ち方を目指していたのかについても話しています。
自身はポイントを積み重ねて勝つことより、井上選手を倒すことを目標としていたと説明。
その中で「どうすればポイントを取れるのか分からない」という趣旨の戸惑いも口にしました。(nikkansports.com)
ただし、その後には「倒すだけがボクシングではない」「ダメージだけでもない」という認識にも触れています。
つまり試合後の時点では、「倒すことを目指した自分の戦い方」と「判定で評価されるボクシング」の違いを整理しきれていなかったと見ることもできそうです。
なぜ那須川天心の試合後コメントに批判的な声が出ているのか?
今回の発言が一部で批判的に受け取られている理由は、一つのコメントだけではありません。
主に、
・自分の中では負けた気がしていないと話した
・「ポイントゲームで負けた」と表現した
・ポイントの取り方が分からないと話した
・8回の採点について理解できないと説明した
といった発言が続いたことが影響しているようです。
ボクシングはKOだけではなく、各ラウンドを採点して勝敗を決める競技です。
そのため「ポイントゲーム」という表現から、採点そのものを否定しているように受け取った人もいたと考えられます。
一方、今回の採点についてはファンの間でも意見が分かれており、特に4回終了時に1人のジャッジが井上選手に40-36をつけたことについては賛否が確認されています。(nikkansports.com)
井上拓真陣営は「もう1回見直したら分かる」と反応
那須川選手のコメントについては、一夜明け会見で井上拓真選手の父・真吾トレーナーも反応しています。
記者:「相手陣営の天心とトレーナーも含めて判定に不服だということについては」
井上真吾:「もう1回あらためて見直したら、わかると思いますよ」
真吾トレーナーは、試合映像を改めて確認すれば内容は分かるという趣旨の見解を示し、ボクシングの採点ルールに沿って戦っていることを説明しました。
井上選手自身も、試合中からポイントを取れている感覚があったとしています。(daily.co.jp)
那須川選手は相手に与えたダメージや自身の手応えを強く感じていた一方、井上選手側はラウンドごとのポイントを意識して試合を進めていたことが分かります。
2025年2月のモロニー戦ではポイントに自信を見せていた
今回との比較で最も興味深いのが、2025年2月に行われたジェーソン・モロニー戦です。
那須川選手は元世界王者のモロニー選手に97-93、98-92、97-93の3-0判定で勝利しました。
試合後、モロニー選手側が98-92などの採点に不満を示していることについて質問されています。
記者:「モロニーは98-92という判定に不満があった」
那須川天心:「いろいろな見方ですよね。判定も3人いるので、いろいろ変わるので」
この後、那須川選手はジャッジに勝敗を委ねないことの重要性に触れたうえで、自分はポイントを取ることが得意だという趣旨を話しています。(nikkansports.com)
今回の「ポイントの取り方が分からない」という発言と並べると、大きな違いを感じる人がいることは理解できます。
モロニー戦では「倒すだけじゃない」とも話していた
モロニー戦後には、採点への自身の手応えについても質問されています。
那須川選手は、自分では十分にポイントを取れている感覚があったと説明。
さらに、ボクシングではKOだけが重要なのではなく、相手にパンチを当てることも評価につながるという考えを示しています。(sponichi.co.jp)
今回の再戦では「倒して勝ちたかった」という思いを強く語っているため、この点も比較すると興味深いところです。
サンティリャン戦では大差判定でも課題を口にしていた
2025年6月のビクトル・サンティリャン戦では、那須川選手が99-91、99-91、100-90という大差判定で勝利しました。
しかし試合後の会見では、勝敗や採点差だけではなく、自分の理想とするボクシングをできなかったことを振り返っています。
記者:「試合を終えての率直な感想は」
那須川天心:「自分の理想としていたものが、なかなか出なかったなというところもあり」
大差で勝った試合でも、自身の内容には満足していませんでした。(nikkansports.com)
また当時の別のコメントでは、ほぼ全ラウンドを取った採点についても、数字以上に試合内容を突き詰めたかったと振り返っています。(nikkansports.com)
この部分を見ると、那須川選手がジャッジの数字だけで自分の試合を評価していない点は、今回にも通じています。
井上拓真との初戦後は「経験の差」と敗因を分析
今回との比較でもう一つ重要なのが、2025年11月の井上拓真選手との初戦です。
那須川選手はこの試合でプロボクシング転向後初めて敗れました。
初戦後のインタビューでは、井上選手の距離感や自身の迷いについて具体的に振り返っています。
記者から自身なりの敗因を聞かれると、
記者:「自分なりの敗因分析は?」
那須川天心:「やっぱり経験の差と言いますか、そこで立て直されたなっていうのはすごいありましたね」
と答えています。(oricon.co.jp)
さらに、井上選手に自分の動きをさせてもらえなかった理由について聞かれた場面では、「ボクシングの深みの差」という表現も使っています。
初戦では、自分がなぜ負けたのかを比較的明確に言葉にできていました。
初戦では公開採点で負けていることも認識していた
初戦では、8回終了時の公開採点で井上選手がリードしていました。
この時に焦りがあったのかと質問されると、那須川選手はポイント差を聞いて焦りが生まれ、試合中に迷いが出たことで判断が遅れたと説明しています。(oricon.co.jp)
つまり初戦の時点でも、ラウンドごとのポイントを取る重要性については認識していました。
この点も今回の「ポイントの取り方が分からない」という言葉と比較できる材料になります。
初戦と再戦では試合後の受け止め方が大きく違う
2度の井上拓真戦後のコメントを並べると、違いが分かりやすくなります。
初戦では、
・距離感で上回られた
・途中で迷いが生まれた
・経験の差があった
・ボクシングの深みの差があった
と、自身の敗因を具体的に分析していました。
一方、再戦では、
・自分では全て出し切った感覚があった
・井上選手にダメージを与えた感覚があった
・7回にダウンも奪った
・それでも0-3の判定だった
・ポイントの評価を理解できない部分があった
という戸惑いが強く表れています。
初戦では「なぜ負けたのか」を比較的理解できた一方、今回は本人の手応えと公式採点に大きな差を感じたことが、コメントの違いにつながっている可能性があります。
過去のコメントと今回の発言は矛盾しているのか?
過去のインタビューと並べると、違って見える部分は確かにあります。
モロニー戦では、
・自分ではポイントを取れている感覚があった
・ポイントを取ることには自信があった
・ジャッジに委ねないことが大事だと話していた
一方、今回の再戦では、
・ポイントを取ることを狙った試合ではなかった
・ポイントの評価に理解できない部分があった
・「ポイントゲームで負けた」と表現した
という違いがあります。
この部分だけを見ると、「勝った時と負けた時で考え方が変わっているのではないか」と感じる人がいても不思議ではありません。
一方で、以前から一貫している部分もあります。
サンティリャン戦では大差判定で勝っても試合内容への課題を口にしており、採点の数字だけで自分のボクシングを評価していません。
今回も、自分がリング上で感じたダメージや手応えを重視しています。
また今回の会見でも「ボクシングで負けた」という認識は示しているため、公式結果そのものを完全に否定しているわけではありません。
そのため、過去のコメントと「完全に矛盾している」とまで断定するより、共通する部分と変化して見える部分の両方を確認するのがよさそうです。
なぜ今回はここまで戸惑ったのか?
今回の再戦に向け、那須川選手は初戦の敗北から約10カ月をかけて準備してきました。
実際に再戦では7回に井上選手からダウンを奪っています。
それでも最終結果は再び判定負け。
初戦では相手の距離感や経験で上回られたという認識がありましたが、今回は自分では手応えがあり、ダウンまで奪っていました。
それだけに、自身が感じた試合内容とジャッジの採点を試合直後には整理しきれなかった可能性があります。
一夜明けても那須川選手は自身のSNSで「何が何だかよくわからない」という趣旨の心境を投稿しており、まだ今回の結果を整理している段階とみられます。(nikkansports.com)
採点については専門家の意見も分かれている
今回の採点については、元世界王者やボクシング関係者の見方も一つにはまとまっていません。
具志堅用高氏は公式採点に疑問を示した一方、細川バレンタイン氏、亀田大毅氏、田口良一氏などは井上選手を高く評価しています。
今回の試合を専門家がどのように評価しているのかについては、以下の記事で詳しくまとめています。
→ 那須川天心vs井上拓真2を専門家はどう見た?細川バレンタイン・具志堅用高らの採点・感想を整理
まとめ
今回の那須川天心選手の試合後コメントが注目されている背景には、「ポイントゲームで負けた」という一言だけではなく、過去の本人の発言との違いもあります。
モロニー戦では、自分にはポイントを取れている感覚があり、ポイントを取ることへの自信も示していました。
サンティリャン戦では、大差判定勝ちにもかかわらず自分の理想とするボクシングをできなかったことを課題として挙げています。
井上拓真選手との初戦後には「経験の差」「ボクシングの深みの差」と敗因を具体的に分析しました。
それに対して今回の再戦では、自身の手応えと公式採点との違いに強い戸惑いを見せています。
過去と比べると発言が変化して見える部分はありますが、一方で「採点の数字よりリング上での内容を重視する」という考え方には以前から共通する部分もあります。
さらに今回も「ボクシングで負けた」という認識は示しています。
今回の発言を「負けを認めていない」と見るのか。
それとも、ダウンまで奪いながら再び判定で敗れ、自身の手応えと採点の違いをまだ整理できていない段階だったと見るのか。
今回と過去のインタビューを並べると、一部分だけを切り取るのではなく、質問と回答の前後まで確認したうえで判断する必要があることが分かります。
主な参考資料と確認日
確認日:2026年9月28日
・那須川天心 試合後インタビュー文字起こし投稿
・日刊スポーツ「敗れた那須川天心、試合後に涙『何が何だか分からない。ボクシングで負けた』/一問一答」
・日刊スポーツ「那須川天心、リベンジならず『やられた感じはしない』『どうやったらポイントとれるんですかね』」
・eFight「那須川天心、『負けた気がしてない』今後については…」
・日刊スポーツ「那須川天心『真面目にやりすぎた』強敵モロニー撃破/一問一答」
・スポニチ「那須川天心 モロニー陣営から判定に不満も『僕は取ってるなっていう感じはありましたね』」
・日刊スポーツ「那須川天心『那須川天心である以上求められるの大きい』一問一答」
・ORICON NEWS「那須川天心『こっから始まる感覚。すごく人生おもろいな』プロ初黒星の会見」
・デイリースポーツ「那須川天心の判定不服に井上拓真陣営が反応」
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