【UFC315】ベラル・ムハマッドはなぜテイクダウンを狙わなかったのか?打撃戦で王座陥落の真相

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なぜベラルは”いつもの戦い方”を捨てたのか?UFC315の意外な結末

 2025年5月11日(日)午前7時(日本時間)に開催されたUFC 315のメインイベントでは、ウェルター級王者ベラル・ムハマッドが挑戦者ジャック・デラ・マダレナと対戦しました。
 グラウンドコントロールとテイクダウンを駆使する“判定職人”として知られ、レオン・エドワーズとのタイトルマッチでは圧倒的なグラップリングで勝利したベラル。しかしこの初防衛戦では、まさかの“ほとんどテイクダウンを狙わず”打撃主体で挑むという大胆な戦略を選択。結果、マダレナに主導権を握られ判定で敗北し、王座から陥落しました。
 なぜベラル・ムハマッドは、自らの得意分野を封じてまで打撃戦を選んだのか? ファンの多くが驚いたその戦略の裏にあった真意を、試合前後の発言や専門家の分析から紐解いていきます。

✅【H2】試合前の宣言「テイクダウンは一切狙わない」は本気だったのか?

 UFC315の前日会見で、ベラル・ムハマッドは記者陣に対してこう宣言しました。

ベラル・ムハマッド
「俺は1回もテイクダウンを狙わない。
“カネロ・ハンズ”の意味をアイツに教えてやるつもりだ」

 “カネロ・ハンズ”とは、ボクシングの名手サウル・カネロ・アルバレスに例えたパンチの技術への自信の表れです。この発言に対し、ファンや関係者の多くは懐疑的でした。

 というのも、ムハマッドはこれまでのキャリアでグラウンドを武器に判定勝ちを量産してきた典型的な“コントロール型ファイター”。過去19戦中15戦で最低1回以上のテイクダウンを仕掛けており、「打撃戦宣言」は誰も信じてはいませんでした。

👤「どうせ最初は打撃で入って、すぐにいつもの塩漬け展開に持ち込むだろう」

――多くのファンはそう予想していました。ですが、彼は本当に“ほとんどテイクダウンを狙わず”、序盤から終盤までスタンドで打ち合い続けるという、これまでとは全く異なる戦い方を実行したのです。

https://x.com/espnmma/status/1919414284674580758

✅【H2】実際の試合内容:なぜ王者は“自分の土俵”を捨てたのか?

 試合は立ち技中心の展開となり、挑戦者ジャック・デラ・マダレナが積極的に前進しながらプレッシャーをかけ続ける展開に。ベラル・ムハマッドは序盤からテイクダウンをほとんど狙わず、スタンドでの打ち合いに応じました。

 後半には数度テイクダウンを試みる場面も見られましたが、マダレナのエスケープスキルが非常に高く、ベラルはケージ際のコントロールポジションを維持することができず、すぐにスタンドへ戻されてしまいました。

 そして試合は完全にボクシング勝負の様相を呈し、打撃の精度・威力ともに勝るマダレナがベラルにより大きなダメージを与え続け、終始ダメージの面で優位に立ち続ける展開となりました。結果としてベラルは、判定3-0で敗れ、初防衛に失敗しました。

✅【H3】なぜあえて危険な打撃戦に踏み込んだのか?

 以下にUFCアナリストのミシェル・ウォーターソン=ゴメスが、この戦略に対して語ったコメントを紹介します。

💬「ベラルは私の元コーチ、マイク・ヴァレとトレーニングしています。彼は本当に素晴らしい打撃コーチなんです。マイクが新しいコンビネーションや戦術を教えているのかもしれません。私たちは常に進化し、成長し続ける存在です。トレーニングで何か“かっこいいこと”を習得すると、それを世界に見せたくなるんですよ。“練習ではできた。じゃあ本番の舞台で披露できるか?”ってね」

💬が勝つとしたら、それはグラップリングの展開です。ケージ際のクリンチや、ケージと床の隙間でのコントロール。あの位置が彼の得意とする場所です。もしかしたら、デラ・マダレナを打撃戦に引き込んで、その勢いでレベルチェンジして距離を詰め、ケージに押し込むつもりなのかもしれません。でも、それは誰にも分からないですね」


✅【H2】試合後に残された“謎”とファンの反応

 UFC 315が終了すると、SNSや各種メディアではベラル・ムハマッドの“打撃主体の戦略”が大きな話題となりました。
 これまでの彼の試合スタイルを知るファンからは、「まさか本当に打撃だけで戦うとは思わなかった」「ベラルの試合で初めて面白かった」といった声も多く上がり、エンタメ性の面では一定の評価を得たことは事実です。

 一方で、「なぜあの状況でテイクダウンにこだわらなかったのか」「チャンピオンとして最も安全な勝ち方を選ばなかった理由は何だったのか」といった疑問も残りました。特に、マダレナの打撃が明らかにベラルより重く、ダメージ量に差があったことを踏まえると、“勝利を最優先するならばグラウンド勝負に切り替えるべきだった”という声も根強くあります。

 さらに、試合後のベラル本人から明確な戦略意図や敗因分析に関するコメントがほとんど出ていないため、ファンの間では「戦略変更は自己表現か、それともそういう作戦だったのか?」という“謎”が残り続けています。

 ただひとつ言えるのは、今回の一戦によって“つまらないファイト”と揶揄されてきたベラル・ムハマッドのイメージは変わったということです。


✅【H2】カマル・ウスマンから見たベラルの戦い方の見解と結果についての感想

 UFC元ウェルター級王者で、かつて絶対的な王者として長期政権を築いたカマル・ウスマンもまた、UFC 315でのベラル・ムハマッドの戦い方に対して独自の見解を示しています。

カマル・ウスマン:
「ベラルはどこでも戦える優れたファイターだが、この試合では自分のスタイルに立ち返ることがなかった。

傲慢だったとは言いたくないが、『いけるだろう』という油断のようなものを感じた。

それが気づけば第2ラウンド、第3ラウンドへと進み、相手のマダレナは一切止まらず、勢いも落ちない。

第4ラウンドあたりでようやく『何かしなければならない』という場面になったが、彼はレベルチェンジも仕掛けず、真剣にテイクダウンを狙う動きも見せなかった。

一方でマダレナは試合を通して攻防のリズムを巧みに変え、優れたミックスアップを続けていた」

 ウスマンは、ベラルとの個人的な因縁こそあったものの、彼の敗北に対して喜びを見せることはありませんでした。
 むしろ「まだ自分と戦っていない」「PPVで注目される対戦カードとして成立する可能性があった」とし、ベラルの敗北を“惜しい機会の損失”として捉えています。


✅あの戦略は間違いだったのか?

勝利は逃したが、過去最高の評価も得た試合

 ベラル・ムハマッドは、王者として迎えたUFC 315で、これまでのグラップリング主体の戦法を捨て、打撃戦を貫くという大きな賭けに出ました。結果的には判定で敗れ、王座を失うことになりましたが、この試合は単なる敗北では終わりませんでした。

 確かに、エンターテインメントとしての評価は非常に高く、海外だけでなく日本国内の格闘技ファンからも「ベラルの試合で今までで一番面白かった」という声が数多く上がっているのが印象的です。

 UFCからもその激しい攻防と会場を沸かせた内容が高く評価され、公式に「ファイト・オブ・ザ・ナイト(Fight of the Night)」に選出されました。これはイベント内で最も印象的な試合に贈られる賞であり、内容がいかに観客の心を掴んだかを示しています。
 「ファイト・オブ・ザ・ナイト(Fight of the Night)」には、ファイトマネーとは別に5万ドル(日本円換算で約775万円)のボーナス賞金が支給されるとされています。

https://x.com/ufc/status/1921448289926279634

敗北にもかかわらず、次戦への期待が膨らむ

 試合後のファンコミュニティやSNSでは、「ベラルの次の相手は誰がいいか」という話題が活発に交わされています。敗北したにもかかわらず「このベラルであれば次も観たい」という声が多数見られることからも、今回のスタイルチェンジはファンの心に強く響いたと言えるでしょう。

 ムハマッドはこれまで「退屈」「フィニッシュがない」といった批判にさらされてきましたが、今回の一戦でその評価を覆す大きなきっかけを作りました。

 勝ち負け以上に、“どのような戦いを見せたか”が注目された試合だったのです。

戦略としては最善だったのか?

 ただし、戦略として見ると疑問は残ります。マダレナの打撃に対し、ムハマッドはダメージ量で明らかに劣勢となり、勝利への道筋を自ら閉ざしてしまった面も否めません。テイクダウンを仕掛ける場面が試合後半までほとんど見られなかったことから、彼が勝ちに徹する判断を最後までしなかったとも捉えられます。

 チャンピオンであればこそ、「どう勝つか」ではなく「確実に勝つ」ことを優先するべきだったという声もあり、今回の戦略が正解だったかどうかは評価が分かれるところです。

再起に必要なのは“勝ち方”の再定義

 とはいえ、今回の敗戦がベラル・ムハマッドにとって大きな転機となったことは間違いありません。もし再びタイトル戦線に戻るのであれば、“ファンを魅了するスタイル”と“確実に勝利を掴む術”の両立が求められるでしょう。

 「面白いが勝てない」ファイターか、「勝つが退屈」と言われる王者か――。彼自身が次にどちらを選び取るのか、再起戦が今から注目されます。


✅もう一つの視点:敗れてなお“得たもの”はあったのか?

ファンの満足度と好感度は確実に上がった

 UFC 315でのベラル・ムハマッドは、これまでの慎重で堅実なファイトスタイルとは一線を画し、打撃主体の試合を貫き通しました。
 結果的に判定負けを喫したものの、その“変化”がもたらした影響は大きく、試合後の反応を見る限り、ファンの満足度は非常に高かったと言えるでしょう。SNSやフォーラムでも、「今回のベラルは最高だった」「こんなに面白い試合をするとは思わなかった」といったポジティブな声が数多く見られました。

 また、これまで「地味」「退屈」と評されてきた彼に対する印象が変わり、新たなファンを獲得したことは間違いないでしょう

“見せたかったもの”は確かに伝わった

 これまでのキャリアを通じてベラルは“勝ちに徹するスタイル”を貫いてきましたが、心のどこかで自分の戦い方への評価を気にしていた可能性も否定できません
 今回、あえて危険な打撃戦に踏み込んだのは、「自分だって激闘を演じられる」「フィニッシュ(KOや一本)も狙えるファイターなんだ」という姿をファンに伝えたかったのではないでしょうか。

 実際のところ本人の真意は分かりませんが、試合後の様子を見る限り、後悔しているような素振りはなく、むしろどこか満足げな表情を見せていたことも印象的です。
 たとえ王座を失ったとしても、ファンの支持を得たという意味では、彼にとって“意味のある敗戦”だったのかもしれません。


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