現在の伊東市長でなければ、メガソーラーは動き出してしまうのか?——
この疑問に対し、静岡市の難波市長が定例会見で、当時の静岡県副知事として関与した立場から事実関係を整理しました。
会見では、住民の強い反対と行政の対抗策、そして2018年施行の条例と河川占用不許可、さらには二審での司法判断までが確認され、事業が止まっているのは前市長期の意思決定と制度運用の結果であることが示されています。
つまり、誰が市長でも条例と許認可の壁は変わらず、再稼働の可能性は極めて低いというのが要点。
本記事では、この会見内容を軸に、伊東メガソーラー問題の経緯と論点を分かりやすく解説します。
田久保市長が伊東市長でないとメガソーラーは阻止できないのか?
結局、田久保真紀市長が伊東の市長でいないとメガソーラーが設置されてしまうのではないかという不安要素を田久保真紀市長は市民に対して仰ぐようなコメントを度々していますが結局のところ、本当にそうなのか?その部分を静岡市長の難波市長の定例会見で発言された内容をもとに検証し、まとめていきたいと思います。
結論から言うと田久保真紀市長が伊東市長じゃないとメガソーラーが伊東に設置されてしまう確率は限りなく0に近いです。
もっと言うと田久保真紀市長が市長職を辞する、つまり市長を辞めたとしてもメガソーラー建設が進んだりメガソーラーが建設されるという可能性はぼぼ無いということです。
その理由について以下に簡単に箇条書きで書き出していきます。
- メガソーラー建設の実質的な阻止を主導したのは「前市長」であり、田久保市長ではありません。
不許可処分(2019年)や、その後の控訴審での司法判断を経て事業が止まっている経緯は、現職就任以前の市政で積み上げられたものです。 - 田久保市長が当選したのは今年(2025年)5月であり、上記一連の「建設阻止」の当事者ではありません。
条例施行(2018年)や河川占用不許可(2019年)、訴訟の一審・二審といった主要局面はいずれも前任期の出来事です。 - 今後、田久保市長でなければメガソーラーが再始動する、ということは基本的にありません。
既に条例が整備され、かつ河川占用許可が出ていない現状においては、誰が市長であっても事業再開のハードルは極めて高いままです。仮に事業者が新計画を構築しても、条例適合性や関連許認可の壁があり、建設が実現する可能性は非常に低いと見込まれます(現行制度・判示が維持されることを前提)。
以上のことから田久保市長が市長にいることでメガソーラーが阻止されているということではない理由になります。
ここからは上記に記載した理由について詳しく静岡市の市長、難波市長が8月5日の定例会見の最後に詳しく解説していますので、その内容を以下にまとめます。
難波市長が語った「伊東メガソーラー問題」の事実関係
— 定例会見の文脈と、住民・行政・司法が交錯した経緯を読み解く
1. まず押さえたい「会見の文脈」
静岡市の難波市長の定例会見は、原則として静岡市政に関する公式発表案件から始まる。今回も例外ではなく、先に次の2件が詳細に説明された。
- 保健福祉サービスの提供体制の改善
- 中島浄化センターにおける鈴川への栄養塩供給増加の取り組み
いずれも、静岡市行政の具体的な課題に対して、市民サービスの向上を図る施策だ。
そのうえで会見の最後に、市長は「静岡市政とは関係ないこと」と前置きしつつ、伊東市のメガソーラー問題について時間を割いた。理由は明快だ。
現在の伊東メガソーラー事業をめぐり、事実と異なる情報が流布している。自分は当時の静岡県副知事として問題に深く関与しており、正確な情報を伝える責任がある——と市長は説明した。
2. 市長が整理した「伊東メガソーラー問題」の要点
以下、難波市長が会見で示した事実関係の説明を、時系列と論点別に分かりやすく整理する。
2-1. 事業計画と住民の強い反対(2014年頃〜)
2014年頃、A社が伊東市で大規模太陽光発電(メガソーラー)を計画。
これに対し、土砂災害の懸念、自然景観の悪化、観光産業への影響を心配する住民の強力な反対運動が起こった。
2-2. 事業者の不適切な現場管理と県の指導
A社は、静岡県および伊東市の許可取得プロセスの段階で、現場管理に不適切な点があったとされる。このため、静岡県は林地開発許可に関して複数回の指導を実施。結果として住民の不信や懸念が増幅し、反対運動は一段と強まった。
2-3. 伊東市の対抗策と静岡県の関与(2018年)
- 2018年2月:伊東市は宅地造成等規制法に基づき、A社に勧告を実施。
- 2018年6月1日:伊東市は「伊東市美しい景観とメガソーラー事業との調和に関する条例」を施行。後の裁判で重要な役割を果たすことになる。
- 2018年7月:静岡県は森林法に基づき、A社に林地開発許可を付与。
2-4. 河川占用許可の不許可(2018年11月〜2019年2月)
- 2018年11月:A社は、事業予定地付近の河川を横断する橋梁と排水管設置のため、伊東市に河川占用許可を申請。
- 2019年2月:伊東市長は不許可処分。理由は 「社会経済上必要やむを得ないと認められるものではない」
という判断で、結果としてA社は事業の先に進めない状態となった。
3. 法廷闘争:一審・控訴審での判断の違い
- A社が提訴:伊東市の不許可処分の取り消しを求めて訴訟を提起。
- 第一審(地裁):伊東市が敗訴。不許可処分は「裁量権の逸脱・乱用」とされ、伊東市の条例は適用不可と判断。
- 第二審(名古屋高裁):実質的に伊東市が勝訴。第一審と異なり、伊東市の条例は適用可能であり、裁量権の逸脱も認められないとされた。
4. 現在の状況と判決の持つ意味
- 事業の現状:A社は依然として河川占用許可を得られていない。橋梁の設置も排水もできず、太陽光発電事業を実施できない状態が続く。
- 判決の注目度:このケースは全国の法律関係者から高い注目を集め、判例時報でも取り上げられた。法律専門家の間でも賛否両論があったと、市長は説明している。
5. 難波市長が「いま敢えて」語る理由
難波市長(当時は静岡県副知事)は、伊東市の不許可処分は適切であるとの県としての見解を当時から示していた。そのため、判決結果に関して「道義的責任」を感じていると語る。
さらに、市長は次の点を強調した。
- 巨額リスクを承知での行政判断:
伊東市は、もし訴訟で敗訴すれば10億円以上の損害賠償請求を受ける可能性があった。それでも住民の利益を守るために行政判断を下し、最後まで戦い抜いた。 - 当時の伊東市長・職員への敬意:
困難な状況下で職員が高い能力と強い意志をもって対応したことに、大きな敬意を表明。 - 住民と行政の相互信頼が鍵:
住民の強い反対運動と、事業者の不適切な行為への継続的な監視が、行政の意思決定を支えた。**住民と行政の「相互信頼」**こそが問題解決の要だった。 - 誤解の解消と“好事例”の共有:
田久保市長の「自分がいなければメガソーラーは止まらなかった」という誤解を正すと同時に、伊東市の職員と住民が信頼関係を築きながら解決に向かった好事例として、他の行政機関の参考にしてほしい。
当時の伊東市職員の立場では公に語りにくい部分もあるため、関係当事者として自分が事実関係を伝える必要があるとした。
6. まとめ:単なる経緯説明ではなく、「行政と住民の協働」を示す実例
難波市長の説明は、単なる時系列の報告にとどまらない。
そこには、
- 行政の重い判断責任、
- 住民との協働の重要性、
- そして、困難な状況下でも職員が力を発揮した実務が描かれている。
伊東メガソーラー問題は、地方自治の現場で「住民の懸念」「行政の裁量」「事業者の適正」「司法の判断」がどのように折り重なるのかを示した、模範的なケースでもある。今回、難波市長が定例会見の公の場で事実関係を丁寧に語った意義は、伊東市の努力と住民との信頼関係を正しく位置づけ直し、今後の行政実務の参考とする点にある。
まとめ
伊東のメガソーラー問題は、「いま誰が市長か」で左右される話ではありません。住民の懸念、前市長期の行政判断、2018年の条例整備、そして河川占用不許可と控訴審判断という制度と判例の積み重ねが、計画を実質的に止めている本質です。
だからこそ、これから求められるのは“人物論”ではなく、情報の正確な共有、環境・防災を踏まえた土地利用のルール運用、住民と行政の信頼の維持です。
静岡市長(当時の県副知事)の説明は、誤解を正し、記録に基づいて論点を整理するための呼び水でした。伊東市にとっての課題は、同様の開発案件が将来起きても揺るがない透明なプロセスを磨き続けること。誰がトップでも機能する制度の強さこそが地域を守ります。
引き続き、一次資料と公的手続きを土台に、冷静に事実を見極めていきましょう。
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