現在、静岡県伊東市の市長である田久保真紀市長の学歴詐称問題で市政が停滞し続けている問題で、8月25日に田久保市長がまたX(旧Twitter)にてメガソーラー関連の投稿をしました。
内容としては前市長がメガソーラー事業を推進させていたという内容のものでした。
今までも何度も田久保市長は自身のXで前市長がメガソーラーを推進していると捉えかねない表現の投稿を繰り返ししています。
それでは本当に前市長の小野達也氏はメガソーラーを推進していたのでしょうか?その詳細を調べていかにまとめました。
伊東市長が投稿した前市長、小野達也氏が結んだ「確約書」は、メガソーラーを前進させているのか?
結論から言うと、現状では「前進させていない(させられない)」のが実情です。
理由はシンプルで、(1)確約書は条件付きであり、その前提条件が満たされていないこと、(2)確約書は条例や許認可法令を上書きする効力を持たないこと、(3)現在も河川占用許可が出ておらず、事業のボトルネックが解消していないこと、の三点に尽きます。
1. 投稿内容のポイント整理(画像に写る「確約書」の骨子)
Xの投稿に添付された文書は、前市長名義の「確約書」です。宛先は事業者(伊豆メガソーラーパーク合同会社)。日付は2021年2月9日(※投稿文では、同年6月28日に前市長が「確約書の存在を認め謝罪した」とする記述があり、これは発行日ではなく“存在を公に認めた(謝罪した)日”を指していると読めます)。
文書に記された主な条項は以下の3点(読みやすいよう要約)です。
- 審査の迅速化
当該事業が地域住民の安全を担保し速やかに実現できるよう、現在申請中の宅地造成等規制法に基づく変更許可申請の審査に限らず、他の申請を受け付けた場合でも迅速に処理する。 - 条件付きの河川占用「許可」
係属訴訟の控訴が棄却された場合(=市側が敗訴の場合)は、所定の手続を踏んだうえで、事業者の河川占用許可申請を許可する。 - 判決確定後の報告
係属訴訟の判決が確定した後、その結果を経済産業省に報告する。
ここでのキモは、②が完全に「条件付き」だということです。
つまり「市の敗訴(控訴棄却)」という条件が成立したら許可に進む、と言っているに過ぎません。裏を返せば、市が勝訴・市の主張が通った場合には、この確約が自動発動する余地はありません。
2. 「確約書」が“前進”を生むと誤解されがちな理由
この確約書というのものはどんな事業であれ要件を満たした確約書は市として通さなければいけません。
それは法律で定められており、誰が市長であっても要件を満たした確約書を市長の判断で通さなかったら法律に違反する可能性があります。
さらに事業者からは損害賠償を請求される恐れがあり、そうなったら市民の税金からメガソーラー事業に多額の損害賠償金を支払わなければならなくなる可能性もあります。
- 文言だけを切り出すと「市が“許可する”と約束した」と見えやすい。
- ただし、未来の行政処分(許可)を“無条件に約束”することはできません。行政の裁量判断は法令・事実関係に基づくべきで、後に生じた事情(条例施行、判決の示す法解釈、災害リスク評価の更新など)を無視して“事前の白紙委任”をすることは、法治行政の原則と相容れません。
- この文書は「条件が満たされたときの方針表明」+「手続の迅速化」に留まると解するのが妥当です。
3. いま、その「条件」は成立しているか?
成立していません。
係属していた訴訟は、二審段階で伊東市側の主張が通り、その後も河川占用許可は出ていないため、橋梁・排水の前提が整わず事業は動いていないというのが現状整理です。
つまり、確約書②の「控訴棄却(=市側敗訴)」という条件が未充足なので、自動的に“許可”が出るロジックは成立しません。
4. 確約書は「条例」や「許認可」を飛び越えられない
- 2018年施行の伊東市条例(「美しい景観とメガソーラー事業との調和に関する条例」)は引き続き有効です。
- 河川占用をはじめ、個別法の許認可要件は今も変わっていません。
- よって、誰が市長であっても、この条例と許認可法令の壁を越えない限り、事業は前進しません。
- たとえ確約書が存在しても、条例や法令に反する処分は不可能で、仮に無理をすれば違法・取消リスクを招くのは市の側です。
5. 「前市長が前に進めた」証拠なのか?
文書の読みどころは、“進める”ではなく“前提条件が満たされたら進める”という条件付けにあります。
つまり、前市長は**「市が訴訟で負けた場合」に限って**、適法な範囲で迅速に手続を進めると述べただけです。いま、その前提条件は起きていない以上、この確約書自体が現在の事業を前進させる効力を持つわけではありません。
6. よくある誤解Q&A
Q1. この確約書があるなら、現市長はメガソーラー事業に許可を出さないと違法?
A. 違います。 許可は現時点の法令と事実に即して行う裁量処分。条件不成就の確約書が法令適合性審査を飛び越えることはありません。
Q2. 確約書は現市長にも拘束力がある?
A. 行政の連続性はありますが、法令・判決・条例の上位性が優先。条件が成立していない以上、自動拘束とはなりません。
Q3. じゃあ、確約書は単なる紙切れ?
A. 歴史的・説明責任上の意味はあります。訴訟帰趨を見据えたリスクコミュニケーション文書であり、当時の行政の姿勢を示す材料にはなります。ただし、法的に現在の事業を前進させる“鍵”にはならない、というのがポイントです.
7. いま注目すべき「本当の論点」
- 条例の堅持と許認可審査の適正(環境・防災・景観・観光への影響評価)。
- 河川占用のボトルネック継続(橋梁・排水ができない限り前に進まない)。
- 誤情報の是正(確約書=前進の証拠、という短絡を避ける)。
- 住民と行政の信頼維持(手続の透明性、説明責任)。
まとめ
- そもそも確約書は要件を満たしていれば市としては通さなければいけない義務がある。
- 確約書は「条件が満たされたときの方針表明」にすぎず、現在その条件は満たされていない。
- 条例と許認可法令は今も有効で、誰が市長でもそれを上書きはできない。
- したがって、今回の投稿自体がメガソーラーを“前進”させる効果はない。効いているのは、主に政治コミュニケーションの領域です。
最後にもう一度。
「誰が市長か」で左右される段階ではなく、法令・判決・条例・許認可という制度の積み重ねが現状を規定しています。確約書は歴史的資料としての意味はあっても、現時点の事業のハンドルは回せない——これが、画像に写る文書と現在の法的枠組みから導ける結論になります。
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